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消費財に特化した海外カンファレス「Grocery Shop 2023」現地レポート!

こんにちは!データコム編集部のYUKIです!
今回は2023年9月にアメリカ・ラスベガスで開催された
流通・小売業向けのカンファレンスについてレポートします!


「Grocery Shop 2023」とは?

このカンファレンスはタイトルの通り、
食品飲料、日用雑貨などの消費財メーカーや
それらを扱う小売業が中心となっています。

消費財という特定領域に特化しているので、
同業者の事例と自社の状況と照らしながら
現実的に実現しうることかを考察できます。

また参加者も少なく、
参加者同士の交流も、しやすい環境です。

アメリカやヨーロッパで開催される
他のカンファレンスでは、消費財に加えて
・ファッション
・家具家電
・飲食
などについても扱うため、
業界を横断した事例共有や学びが特徴となっており
このカンファレンスとは大きく異なります。

今年の4大テーマ

昨今の小売業界で重要なテーマとして、
以下の4つがあげられました。

それぞれがどんなことを意味しているかについて
触れていきます。

購買プロセスへの影響

「①購買プロセスへの影響」で主に語られたのは、
次世代の消費を担うZ世代(1990年代後半~2010年代生まれ)の
商品探索の在り方。

現在の消費を支えるX世代(1965~1980年頃生まれ)と
対比しながら商品の探索方法が
変化していることが語られました。

Z世代はソーシャルメディアで
新たな商品と出会う傾向があり、
X世代と比較した数値はこのようになっています。

  • 店頭の棚で探す:Z世代19%、X世代27%

  • ソーシャルメディアで探す:Z世代30%、X世代13%

ソーシャルメディアでは、
友人関係や閲覧履歴などに基づき、
提示されるコンテンツが最適化されるため、
自分の好みと合致した商品と自然に出会えるのでしょう。

別の調査で、“Z世代は主体的な探索を好まない”
という結果が出ていたので納得です。

そういった状況で、
消費者に影響を与える手法は
変わっていくと言います。

スマートカート、スマートフォンアプリ、
(値札を含む)サイネージ、電子リーチイン、セルフ決済など、
動的にコミュニケーションを取れる方法が続々と登場しています。
探索の手間を省きつつ、
有益な商品情報を提示出来るかが重要となるでしょう。

アメリカ大手ドラッグストア「Walgreens」の
一部店舗で導入されている電子リーチイン「Cooler Screens」は、
飲料や冷凍食品の売場に採用されています。
※リーチインとはコンビニなどにある、ガラス扉付きの棚です。

リーチインイメージ

どこに商品が陳列されているか、
在庫があるかが一目で分かるため、
心地よい体験です。

また、新商品などに関する動画も流れているため、
自然と情報が入ってきます。

店舗スタッフとやり取りすることなく、
情報が得られるので、
Z世代の志向にもフィットしているように感じます。

Generative AIの幕開け

「②Generative AIの幕開け」では、
活用の目的が以下3つに大別されると言います。

生産性と効率性の改善
顧客体験の改良
クリエイティブ活動の強化

そのなかでも、生産性と効率性の改善
現時点でも取り組めることが多く、
社内文書を要約したり、
情報を探したりする作業などが当てはまると言います。

一方で、顧客体験の改良クリエイティブ活動の強化
中長期的に取り組んでいくことが必要になります。

顧客別の健康アドバイスや
商品説明文・ビジュアルの作成などが該当しています。

商品情報、および顧客の購買履歴・趣味趣向などを蓄積し、
学ばせていくことが重要であり、
例えGenerative AIが優れていても、
一定の期間を要します。

また、多くの顧客情報を取り込ませることになるため、
各社ともセキュリティに万全を期す必要があることを
強調していた印象です。

併せて、顧客から取得したデータを活用する以上、
顧客にとっての便益をしっかりと提供することも
肝要であると言えます。

技術の登場から間もないため、
今回登壇した各社、
および参加者も最適な活用を模索している様子です。
会場内で行われたアンケートでも、
本テーマへの関心が最も高いようでした。

効率性と収益性の追求

「③効率性と収益性の追求」は、
アメリカ小売各社が近年苦しんでいる窃盗の話題が
中心になっていました。

WalmartやTargetなどの決算説明でも、
この問題へ言及することが増えています。

店舗によっては、1,000万円/日の損失が出てしまい、
閉店に追い込まれたとのこと。

近年は、個人犯罪に加えて組織的犯罪が増加し、
対応強化が急務です。
鍵付きの棚にサプリや歯磨き粉などを陳列するドラッグストアや、
電子工具のスイッチにロックを掛けて、
購入のタイミングで開錠するホームセンターなど、
各社工夫を凝らしています。

本来かけなくて良いコストと言えばそれまでですが、
このような事態となった以上、
避けられないコストになっています。

その際、単一の課題に対処するのみでは、
なかなか収支が見合わないので、
いかに“顧客体験の向上”と絡められるかが重要です。

次世代の実店舗

「④次世代の実店舗」では、
DX化が進むなかでの店舗づくりについて語られました。

実現に向けて鍵となるのが、
「Continuous(連続的)」「Frictionless(手間の少ない)」とのこと。

Continuousは、
消費者が取る店外行動と店舗の連携を指し、
オンライン上で検索したり、
購入リストに登録したりした情報と
店舗での購買行動を紐づけるべきだと語られました。

せっかく調べた情報があっても、
店舗と切れてしまうと勿体ないため、
アプリや店舗のデバイスと繋げる必要があります。

また、Frictionlessは、
店舗での商品探索や決済の手間を軽減させることを指します。

店舗での商品探索については、
購買プロセスへの影響でも言及したように、
Z世代を中心に商品探索自体を
手間と捉える傾向があることから、
いかにその手間を減らせるかが重要になります。

決済の手間を軽減させることについては、
店舗での購買における悩みの種のひとつである
レジ待ちの短縮を意味しています。

セルフレジやスマートカートの登場によって、
有人のレジにわざわざ並ばなくても、
会計を済ませることが可能になってきました。

AmazonやInstacartが提供しているスマートカートは、
まさにContinuousとFrictionlessの両方を
実現しうるサービスと言えるでしょう。

スマートカートにログインすると、
家で登録した購入リストがスクリーン上に表示されるため、
何を買うべきかの確認が可能です(Continuous)。
また、カートに入れた商品は自動認識されるため、
スキャンの手間はありませんし、
スクリーン上で決済が出来るので、レジ待ちも不要です(Frictionless)。

ただし、スマートカート導入の店舗に行ってみても、
利用している人はそこまで多くなく、
消費者がどこまで求めているかは定かではありません。

まとめ買いをする傾向があるアメリカの人々にとっては、
週1、2度のレジ待ちは
そこまでストレスとなっていないのかもしれません。

おわりに

ここまで、Grocery Shop 2023で取り上げられたテーマを中心に、
アメリカの小売事情を見てきました。

コロナ禍を経て、
購買行動における消費者のデジタル活用が加速しています。

売上・利益を上げるために、
小売事業者も対応力を高めた印象を受けます。
一方、スーパーマーケットやドラッグストアは、
単価が決して高くないため、
ハードやソフトに対する投資を回収する難しさもあり、
各社とも慎重に検討する側面もあるようです。

人件費や販促資材費などの削減、顧客の購買体験向上など、
多面的な効果を考えながら
投資判断をしていくべきだと感じました。

アメリカと日本では、
状況が異なる部分もありますが、
日本でも今回のテーマについて
考えを深めていく必要があります。

特に、昨今議論が過熱している
Generative AIの活用については、
アメリカが先行しており、
学ぶところが多いように感じます。

上にも書きましたが、
短期、中長期それぞれで進められることを冷静に整理しながら、
日本の小売業でも売上・利益の向上に資する活用を
進めていかなければならないでしょう。。。。。

今回のライター紹介!

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