「足元を掘る」ことに注力すべき時代がやってきた!
「足元を掘れ、そこに泉が湧く」
過去にはさまざまな思想家が、この言葉とほぼ同様の言葉を残しています。私が知る限りでは、ローマ五賢帝の最後の一人、マルクス・アウレリウスの『自省録』の中に見られるのが最初のようです。以降、ゲーテやニーチェなど、そうそうたる思想家の著書にも同様の言葉が見られています。
「己の中にこそ目を向けるべき宝があるのに、人は外にばかり目を向ける」というのは、ドイツの哲人ショーペンハウアーの言葉です。宝は足元にあるのに、なぜそれに目を向けることなく外ばかり見るのか。このような警鐘を鳴らす複数の思想家たちの名言が、今、まさにスーパーマーケットの世界にそのまま当てはまる言葉となりました。
スーパーマーケットには、過去に何を並べても売れる時代がありました。それは、人口が右肩上がりに増加の一途をたどっていた時代の話でもあります。そのような成長の時代には、足元、つまり既存顧客に目を向ける人はほとんどいなかったのではないでしょうか。皆が新たな顧客の確保に向け、外ばかりに目を向けていた時代だったのかもしれません。
「釣り上げた魚には餌をやらない」との例えがありますが、表現の是非はともかく、それに近いものがあったようにも思えます。そして、その名残は今も残っているようです。しかし、釣り上げた魚、すなわち既存顧客(ユニーク顧客)の満足度を上げない限り、企業は現状維持すら困難な時代に直面することになりました。長期にわたって人口減が継続する時代においては、足元をおろそかにすれば、それこそ足元をすくわれることになりかねないのです。