食産業の持続可能な成長に必要なこととは?(後編)|食の祭典「Anuga 2023」レポート
こんにちは!
データコム編集部のYUKIです!
今回は2023年10月07日 ~ 2023年10月11日に
ドイツで開催された「Anuga 2023」の
参加レポート後編です!
前編はこちらから
改めて「Anuga」とは?
この展示会は、
食品や飲料などのメーカーが
自社商品をアピールする場として
世界で最も有名なイベントのひとつです。
実際に代替肉を食べてみた inマクドナルド
講演を聞きながら、
「一体どんな味、食感なのだろうか?」
と気になり始め、マクドナルドを訪れて食してみました。
いざ!マクドナルドの店舗を訪問してみると、
代替肉を用いた“Mc Plant”ブランドを
全面にプロモーションしていました。
現在のラインナップは
ハンバーガーとナゲットの2つとなっており
今回はハンバーガーを試食しました!
一口目の正直な感想は、
「豆っぽいモサモサした食感で、味も淡泊…」でした。。。。
味に対して多少のがっかり感があるだけならまだしも、価格についても少し違和感がありました。
ハンバーガーが1.4€(約220円)
チーズバーガーが1.7€(約270円)であるのに、
Mc Plantのハンバーガーは4.6€(約700円)と
普通のハンバーガーよりもかなり高価でした。
「通常のハンバーガーに比べて、味が劣るにもかかわらず、価格は約3倍か…」
というモヤっとした気持ちになりました。
私自身が大豆などの豆類が
あまり得意ではないので、
このような感想を持ったかもしれませんが、
“ジューシー”な肉を求めている人は
同じようなリアクションをするのではないかな思いました。
Alternative foodsやHealth foodsの浸透を左右するポイント
私の実際に食べてみた感想を述べましたが、
実はこの体験にAlternative foodsや
Health foodsなどの将来と
深く関係する3つのポイントがあります。
大手フードチェーンなどによる商品化とプロモーション
1つ目は、大手フードチェーンなどによる
商品化とプロモーションです。
現在、代替肉・魚などの開発を推進するのは
ベンチャー企業です。
そして、その多くは
料理や商品の原材料となる食品、
あるいはその基となる成分の開発・製造に注力しています。
そのため、生活者に
認知・消費してもらうためには、
パートナーと協業して、
商品化することが不可欠です。
特に、生活者に広く認知してもらい、
安心して消費できるようにするためには、
大手企業とタッグを組む必要があります。
Beyond Meatとマクドナルドが
開始したパートナーシップは
まさに好事例と言えます。
日々、多くの顧客接点を持つマクドナルドが、
代替肉を用いた商品化を行い、
プロモーションに注力することは、
今後の浸透に大きく貢献するでしょう。
プラントベース食品特有の味、食感の改良
2つ目は、味・食感です。
私の感想の通り、
代替肉は家畜肉と
味・食感ともに大きく異なります。
Beyond Meatが提供する代替肉は、
他の代替肉に比して、
かなり再現性が高いと言われていますが、
それでも限界があります。
宗教や食の主義から、
家畜肉が食せない人々にとっては、
食の選択肢が増えるため、
多少味や食感に課題があっても、
受け入れられる可能性はあるでしょう。
一方で、これまで家畜肉を
好んで食していた人々は、
味や食感に満足できないと
代替肉にシフトすることをためらうでしょう。
ビーガンやベジタリアンの割合が
増えているとはいえ、
全人口に対する比率は一桁台であり、
まだまだ家畜肉を食す人が多いのが事実です。
持続可能な生産に対する意識を持つ人でも、
食の消費においては、
“美味しい”という感情を持てないと
継続的な消費にはならないはずです。
必ずしも家畜肉と
酷似させる必要は無いと思いますが、
生活者が“美味しい”と思えるものを作ることが
今後重要となってきます。
通常の商品と同等の価格設定
最後のポイントは価格です。
カンファレンスに登壇した
ベンチャー企業CEOの大半も、
マスマーケットに進出するためには
価格を落とすことが
必要不可欠であると主張しています。
現時点では、
マーケットがしっかり形成されていないため、
小規模な生産になってしまい、
規模の経済が効いていない状況です。
Beyond Meatのように、
大手チェーンと組みながら
マーケティングを行うことで、
ニーズの見立てが立てやすくなっていき、
規模感をもった生産に近づけるでしょう。
おわりに
ここまで、展示会やカンファレンスの
様子に触れながら、
「食産業の持続可能な成長」について考察してきました。
ヨーロッパをはじめ、
グローバル全体で
“持続可能な消費”に対する意識は強まっています。
生活者の意識が高まっているからこそ、
食品メーカーなどは社会・環境に対する影響を
考慮した取り組みなどを表明し、
共感を得ることが重要になります。
ただし、意識が高まっているとはいえ、
生活者に継続して購入・消費してもらうためには、
商品そのものの価値(味や食感)向上に
最大限尽力することを忘れてはいけません。
そして同時に、
価値に見合った価格設定を
行っていく必要があります。
価格設定において1点留意すべきは、
生活者の“支払っても良い価格(Willing to Pay)”
の検討において、
当該商品がどれほど「食産業の持続可能な成長」に
貢献しているかという点が含まれていくということです。
機能的な価値と社会的な価値を踏まえながら、
妥当な値付けに近づけていくことが非常に大切でしょう。
現在の社会的な勢いを一過性のものにせず、
根付かせるためにも、流通小売業界全体で、
マス向けの商品開発および
認知拡大を推し進めるべきだと痛感しました。